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頼んでもいないのに恋人の写真を見せてくる奴、あなたの周りにもいるだろう。
恋人のルックスを褒めてほしいんだろうなと思うけど、そうでもない場合は言葉に詰まる

どうしようもなくて、「やさしそうだね」なんて言ってごまかすけど、本意ではない。
「やさしそう」は、「特徴がない」とほぼ同意。
お前の恋人って地味だね、と言われているようなものだ。





「最近彼女ができたんですよー! これなんですけど」

先日、前の職場の後輩にこれをやられた。
嬉しそうにスマホで写真を見せてくる。
ちょっとギャルっぽいので個人的には好みではないが、世間からしたらモテそうなキレイなコが映っていた。

「カワイイじゃん、羨ましいなぁ」
「そうですか? あざーっす!」

社交辞令だよバカ。
でも、その彼女がEカップだということが彼の口から判明し、本当にちょっと羨ましくなって顔面に掌底でも浴びせてやろうかと思った


それから数日したある日、駅から家に向かって歩いていると、通りの反対側をその後輩と彼女が並んで歩いている姿を目撃した。
あぁ、あれが例の彼女か。
写真よりもずっとキレイに見えた。
私に気づいた後輩が手を振ってくれて、彼女は軽く会釈をした。
本当に単純に、ステキな彼女だなと思った。
なぜか感じた哀愁に、なんか、夏だな、と思った



さらに数日後、素直な気持ちで彼に言った。

「彼女、写真よりずっとカワイイじゃん!」

こう言ってもらうのが望みだったんだろ?
さぞや笑顔になっているはず…あれ?
むしろ苦笑いになっている。

「この前一緒にいたコは、彼女じゃないんですよ…女友達です

血の気が引いた。
いっそ流れ出してしまって貧血で失神したかった

「あぁ…なんだそうか! だったら写真のコの方がカワイイよー!

何の言い訳にもならない発言をしてしまい、余計に空気が悪くなった


その日は何事もなかったかのように解散したけど、彼はヘコんでしまっているかもしれない。
でも、元はといえば頼んでもないのに写真を見せてくる方が悪いんじゃん!
なんて、その夜は罪悪感で押しつぶされそうな自分を正当化しようとした
なんか、夏だな。



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